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ビデオデッキ構造解説 1988年製造 NEC VC-N90の場合

 この時期のNECビデオは、再生中の速巻き動作が非常に高速です。3倍モードでは実に27倍速を誇ります。しかも2段階に速度の調整が出来るようになっていますので、これは面倒なCMの早送りなどでかなり有利になります。ちなみに他社は15倍速程度に押さえてありますのでそれだけ待ち時間が長くなる結果になります。こういうデッキはイライラするだけなのでさっさと買い換えを検討しましょう。

どんなVTRだったのでしょう

 いままでのNECメカは、85年頃に開発されたビクターのVHSメカに酷似していたものを搭載していましたが、こちらの写真のもの(VC−N90)位から徐々に新メカに移行していきました。なお、VC−N90という型番を聞いて、モノラルじゃないの?と思う方もおられると思いますが、実はHi−Fi機で、さらに電話予約機能や留守番電話が内蔵されているという、なんとも変わった機種です。Nは一般的に、多くのメーカーの付けそうなノーマル音声のNではなく、ネットワーク(電話対応)のNなのではないかと思います。写真が汚くてすみません。実は本体も数ヶ月間ほったらかしてホコリだらけの状態だったので、よく見ると白いホコリが大量に見えますがご勘弁ください。



内部公開

 実はこのVC−N90は、故障しています。テープも入っていなければ、何も操作していないのにも関わらず、電源を入れるとキャプスタンモーターがフル回転でブン回ってしまうのです。キャプスタンのICやホール素子、モーターコントローラか、速度調整のICが壊れたかと思いますが、わざわざ代替部品を手に入れてハンダを使ってまでして直すような価値もありませんので、バラして廃棄することにしました。電話予約対応というのがちょこっと惜しいんですけどね・・・



良質なコンデンサを大量採用

 昔から、NECのハイファイビデオの特徴として、オーディオプロセスの周辺基板に高級なオーディオ専用コンデンサをたくさん使っていることです。赤いコンデンサがそれです。それにAC電源コードも極太のものを採用しています。ビデオデッキでは画質が大切ですが、ハイファイという音質にこだわるVTRが発売されて、同スペックの数々のメーカーのハイファイ機の中でもただ1社だけ、オーディオの面で強いこだわりがあるメーカーなんだな、ということがわかります。外見や画面を見ただけではあまりわからない、地道な努力がこういうところで伺えます。効果のほどはどの程度あるのかわかりませんが・・・もしかしたらカタログを飾るだけのものなのかもしれない。



基本メカ

 さて、撮影が容易になるように、再起不能になるまでネジやコネクタを取り外してバラしまくります。こちらがこの時期のNEC製メカになります。
 特徴としてはシャープの時にお話しした、レスポンス向上のためにアイドラギアが2つになっていること(ただしシャープなどとは考え方は少し異なり、内側のギアは常時かみ合っていて、真ん中のアイドラの移動距離が小さくなるようになっている)と、モードコントロールモーターが右上に配置されてメカ上面からメンテナンスを行えるようにしたこと、従来のNECメカから改良されてハーフローディング方式になった(このままのメカでメカセンサーだけ変更してフルローディングの機種も後継機種の中で多く存在します)、あとはメインブレーキが従来機種よりも貧弱になったこと、などですかね。大きなトラブルもなく、良いメカだと思います。最近、NECが高級VTRを作らなくなってしまったことは、非常に残念です。せいぜい2万円台のものしか作っていなく、せいぜいパーフェクTVのタイマー録画対応くらいしかうたい文句が無くなってしまっています。素質は充分あるのになぁ。



カセットハウジング

 NECのカセットハウジングは、84年〜90年頃までほぼ同じものを採用しており、最初に開発したカセットハウジングの高い完成度がわかります。特徴は、残量を目視するための明かりとして、まめ電球がついており(このオレンジ色にぼーっと光るのは少しダサいですが・・・ちなみに富士通ゼネラルやAKAIは緑のLEDでカセット背面ラベルを照らしていましたので少しかっこよかったです)この電球はよく切れます。というかこの時期の現存しているNECのVTRはほぼ全滅だと思います。切れてもカセットの残量が目視できなくなるだけなのでとくに動作上の支障はありません。なお電球の下にはカセットテープの上面を映し出す「鏡」が付いています。なんとも奇特なアイデアです。同時期の他社は電気的に残量を出していたのですが、LEDを6個ほど使ってインジケータ方式でパネルに出し、単純に算出していたのですがなにしろインジケータが6個しかないので誤差が1時間〜30分ほどあります。これに対し、こちらは人間が目で見て残量を判断するので、残量計算の誤差修正のためのT−120/160切り替えスイッチも要らないですし、使う人間が慣れれば一番正確なのではないでしょうか。


症状
カセット残量目視用の電球が切れてしまう場合が多いです。

対策
切れたところで、そのまま使えますが、修理する場合は小型の麦球を買ってきて取り替えます。



優れた設計


バネ機構のない吸い込み機構


なんとタクトスイッチ!

 さて、その完成度の高いカセコンですが、他社に比べていくつか特徴があるのでこれをまとめてみます。まず左の写真はカセットが押し込まれたときに動作する歯車なのですが、固めのセッティングをしてあるクラッチが1つ搭載してあるだけで、バネ類の機構が使われていません。他社はバネを使って一定の力で吸い込むように設計されているのですが、NECのものは、手でカセットテープを押し込もうとして加えた力をすべて使ってハウジング内に押し込み、つづいてモーターを動作させて手の力+モーターといった感じで力をプラスしてスムーズに吸い込むようになっています。実に効率の良い吸い込み方式です。これに対して大多数の他社メーカーは、不要な力を捨てるために、バネによって強制的にテープをはねのけたりさせるため、テープを入れたときの感触が悪いし、一定時間テープを手で押し込んだままホールドしなければならないので使い勝手も悪いです。そのうえバネの固定部分がプラスチックで出来ているものが多く、経年変化でバネの強さに固定プラスチックが負けてしまい、ダボが折れてしまってハウジングが使用不能になります。パナソニックやシャープ、日立(旧メカのソニーも含む)にはこの傾向が特に多いようです。壊れてしまったらハウジングのフレームごと交換するしか手はありません(修理代は高くつきます)。

 そして右側の写真、これはカセットが完全に上がったときと完全に降りたときを関知するセンサー(とはいっても単なるスイッチです)なのですが、通常、他のメーカーではこういった場所にはマイクロスイッチを取り付けていて、メカのきしみなどで生ずる多少の誤差を修正するようになっています。しかしNECのものは、なんと大胆にもタクトスイッチを使っています。普通はこのスイッチは全面パネルの電源・再生・早送りボタンなどに使うスイッチです。こんなものを使っているのにも関わらず、いままでNECのカセットハウジングに関するトラブルは一つも見ていません(上記の電球切れを除く)。このことからも、NECがなぜ84年からずっと同じカセットハウジングを使っていても問題が出ない理由がわかります。つまり設計上の完成度が他社に比べて非常に高いのです。


症状
おそらく故障は滅多にないようですが、もしカセットを下げたときのセンサーが働かなくなると、カセットを入れた後、きちんと装填されているにも関わらず、モーターが止まらなくなってしまうと思います。

対策
タクトスイッチに少量の油を差して、数十回強く押して、油を充填させます。そうすると、たいていのタクトスイッチは再び使えるようになります。



ローディングモーター


ローディングモーター

ひっくり返したところ。

 ローディング用のモーターです。やはりNECもベルト駆動を使っているため、ベルトが伸びると正常に動作しなくなります。ゆるんだままでもなんとか動いているようですが、各種動作の中でも再生中に巻き戻しをしたときに一番トルクが必要になるようで、プーリーが空回りしてしまい、約6秒後に安全装置が働いて電源が切れます。
 下のうずまきは、このモーターを取り外して逆さまにすると見えるようになります。ここのグリスが切れると、メカの動作が重くなり、上述のベルトのゆるみと同時に発生するとほとんどの動作が重くなってしまって動かなくなってしまいます。まぁこれは他社も同じ症状ですから買い換え需要も考えての消耗品の採用なのかもしれません。いつまでもきちんと動いてもらっては、新機種が全然売れなくなってしまいます。
 ちなみにNECのこのメカは、メカの監視が厳重になっており、たとえばモーターについているプーリーの直径を少し大きくしてメカレスポンスを上げる改造などをすると、すべてメカエラーになってしまって正常に動かすことが出来ません。うーんここまで厳しく監理しなくてもいいんじゃないだろうか・・・とはいうものの、とにかく優秀な設計なことは確かです。


症状
 ベルトが緩むと、負荷のかかるメカ動作が出来なくなります。
 渦巻き状の溝のグリスが切れると、モード切り替え時のきしみ音や、無駄な負荷増加の原因になります。

対策
 ベルト交換、またはアルコールで拭いて脱脂する。
 グリスを少量塗ります。



サブブレーキパッド

 こちらは、巻き取り側のリールのアップ写真です。数字(2717)の上にあるパッドは、再生中の巻き戻しの時に一定のテンションを与えるためのパッドなのですが、長く使っていると温度変化や経年変化で接着剤が変質して上にずれてしまい、あさっての方向にテンションをかけていたり、最悪は取れてしまっています。取れると、プラスチック面がリールに直接あたってしまい、もちろんテンションはかけられなくなりますので巻き戻しの画面が乱れますし、そこにパッドを貼っていた糊が残っていたりすると、再生中ずっとキリキリとヤな音を発するようになります。


症状
巻き戻し再生のときの画像が異常(画面が全体に縦に揺れる)。
停止ボタンを押してアンローディングする際、パッドが無くなるとテンションがかけられなくなるのでテープが異常なほど巻き戻ってしまう。
対策
サブブレーキパッドを交換します。もしくは、とれてしまったパッドを再び強力な接着剤で取り付けます。



回転速度検出

 これは1つ上の写真にあるリール台を逆さまにしたところです。この縞模様には意味がありまして、ここにLEDを使って光を当てます。そして当てた光は近くにあるフォトカプラにより光の量を電流に変えてそれを後段の回路で電圧として検出します。仕組みとしては、まず光を当てて反射させるのですが、黒い部分は光が反射しませんので電圧は出ません。しかし銀色の部分は光が反射して電圧が出るようになります。なるほど、おもしろい原理です。で、これを何に使っているのかというと、リールが正常に回転しているか、右側のリールに対して左側のリールの回転数はどうなっているか、などを検出します。これを使ってテープの残量を電気的に算出することが出来るのです。


症状
 回転検出の銀色部分が曇ってしまい、うまく検出が出来なくなります。再生ボタンを押して、きちんと巻き取りリールが動いているのに数秒後に停止になったり電源が切れてしまう場合は、ほとんどがこれが原因です。
 なお、真冬など、室内で加湿器を使っていると、カルキ成分が内部のいたるところに進入するらしく、こういった曇り現象が顕著に現れます。
対策
 いったんリール台を外して曇ったシールをアルコールなどで磨けばOKです。外す際にはポリワッシャがかけられている機種が多いので、これを取り外すときに壊さないように気をつければ、再利用できるようになります。なお、リール台の高さを微調整するためのワッシャが入っている場合もありますので、そういった機種の場合は最初に入っていたワッシャの数をメモしておいて、組み付けの際は同じ順番で入れるようにします。



メインブレーキと電磁石制御ブレーキ


貧弱なメインブレーキ


プランジャを使ってブレーキ制御

 さて、この左の写真はNEC製VTRの駄目なところです。黒と白のメインブレーキがありますが、数年後にはブレーキの力が弱くなってしまってダメになります。交換するときは、キャプスタンから導かれているプーリーを取らなくてはなりません。そのときにポリワッシャも取り除くので、この部品は原則、再利用できない決まりになっているのでこれも交換することになります(うまく取れば再利用できます)。さらにメインブレーキにもポリワッシャが・・・これは直径が小さいので取るのが大変です。このメカではここらへんのメインブレーキ系統のメンテナンスが非常に面倒なのです。しかも、取り替えたところで1〜2年使っているとまたダメになります。
なお、メインブレーキで一番強力なメーカーは、ナショナル(パナソニック)です。このメーカーのメインブレーキは、たとえ10年たってもバチッと一気に停止してくれる、頼もしいブレーキです。こういったことからも、それぞれのメーカーが一長一短あることがわかります。
 右側のプランジャ(電磁石)は、ブレーキ制御専用のものです。こういう独立制御が出来る部品を使っているメカは、概してレスポンスが良くなります。ローディングモーターだけでローディング・ブレーキ制御などをすべて行うメカでもレスポンスはよいものもありますが、大抵は力をためるのに時間がかかったり、エンドセンサーが働いた後に停止するまでの時間が長くなってしまい、巻き戻しをしたときにテープを切断してしまう結果になります。


症状
 ブレーキパッドが弱ってくると、高速巻き戻しをした後に再生をする際、テープが緩んだままになって、そのまま再生させるとテープのエッジが痛みます。また、テープを最初の位置まで巻き戻しをしたとき、エンドセンサーからの指令によりブレーキをかけますが、そのブレーキ力が弱いためにテープが一番最初まで巻き戻ってしまい、パッド消耗の度が過ぎるとテープを切断してしまいます。
対策
 ブレーキパッドは、消耗部品として購入するしか方法はないでしょう。他機種のパッドを植え付けたりしてみましたが、リール台にふれる面積が小さいこのメカでは、接着面の負荷が非常に高くなるため、あまり長続きしませんでした。



モードコントロールスイッチ

 メカ制御の要であるモードコントロールスイッチです。NECも光制御から改悪してしまって接点式になりましたが、位置や設置角度がよいのか、東芝のものほどトラブルは無いようです。シャープのように抵抗値を変化させる方式でないこともトラブルが減る要素です。


症状
 メカの動作が全体的に不安定になったら、まずはこの部品を疑うべきです。

対策
分解してひげ部分を清掃すれば、たいてい直ります。(詳しくはシャープの項を参照
なお、組み付けの際は出っ張り部分がきちんと歯車の溝に入るように設置します。




部品取り

 今回、部品取りとして使えそうなものを外しました。モーター、ブレーキアーム、ベルト各種、メカジャンクションの基板、プーリー、ピンチローラー、ヒューズ、ポリワッシャです。すべて状態が良かったので取っておくことにします。電気系が壊れているVTRは、消耗部品がまだ使えてしまうケースが多いようです。
 なお、メカジャンクションは今後、パソコンの改造の際に使います。
 こういう「使えるときは使えてすごくラッキーだけど、その出番はほとんどない」というゴミみたいな部品を取っておく癖があるから、部屋が汚くなるんだなぁ・・・



おまけ:留守電&電話予約応答基板

 VC−N90には、普通のビデオの中には存在しないはずの、デジタルな匂いのする基板が搭載されていました。カスタムCPU、音声記憶用のROM、D/Aコンバータや、プッシュホンのDTMFを解析するデコーダなどが見えます。右側はほとんど普通のモデムのような構造で、トランスやリレーなどが乱立しています。これって単独で使えたらおもしろいかなって思ったのですが、制御用のコネクタが7ピンで前面パネルの時計LSIに接続されていて、どうやらシリアル転送でデータの受け渡しをしているようです。こうなってしまうと解析には大がかりな装置が必要になってしまいますので、あきらめました。

 ケース右側には留守電応答用のスピーカが張り付けられています。

 


ネタができたらまた追加します。




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